Introduction
建物の塗装工事というと、多くの人が「どんな色にしようか」や「どの塗料が長持ちするのか」など、塗装そのものに意識が向きがちです。しかし、実際には「下地処理」が塗装の品質と耐久性を決定づける非常に重要な工程であることをご存知でしょうか?この記事では、塗装工事における「下地処理」の目的や具体的な作業内容、重要性、手を抜いた場合のリスクなどを詳しく解説します。これから外壁や屋根の塗装を検討されている方、業者選びに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
下地処理とは?
下地処理とは、塗装を行う前に対象の表面を整える作業のことです。壁や屋根などの塗装面には、長年の風雨や紫外線によって生じた汚れ、カビ、ひび割れ、旧塗膜の剥がれなどが存在します。それらを放置したまま塗料を塗っても、すぐに剥がれたり、ムラになったりしてしまうため、塗装の「土台」を整える作業が必要不可欠なのです。
下地処理の主な工程
1. 高圧洗浄
高圧洗浄は、塗装面に付着した汚れやホコリ、藻・カビなどの微生物を除去するための工程です。専用の高圧洗浄機を使い、水圧で表面の不要なものを徹底的に洗い流します。この作業が不十分だと、塗膜の密着性が悪くなり、短期間で剥がれてしまいます。
2. ケレン作業(旧塗膜の除去)
ケレンとは、サビや劣化した旧塗膜を削り落とす作業です。主に金属部分や木部に行います。サビが残ったまま塗ると内部から腐食が進行してしまうため、サビ止め塗料の前にケレンを施すことが必須です。手工具や電動工具を用いて、表面を適度に粗らすことで塗料の食いつきを良くします。
3. クラック補修(ひび割れの処理)
外壁のひび割れ(クラック)は、雨水の浸入経路となり、建物の構造に悪影響を与えるため、必ず補修します。ヘアークラック(微細なヒビ)にはシーラーやフィラーを使い、構造クラックにはエポキシ樹脂などを注入して補修します。
4. パテ処理(凹凸の修正)
パテ処理とは、壁面の凹凸や段差を埋めて平滑にする作業です。特に補修後の部分や旧塗膜の剥がれた跡などには段差が生じるため、均一な美観を得るにはこの工程が不可欠です。
5. シーリング処理(目地の打ち替え)
外壁材の継ぎ目や窓まわりなどのシーリングも、劣化していれば打ち替えます。ここが劣化していると水の侵入を防げないため、防水性を高める意味でも下地処理の一環として非常に重要です。
なぜ下地処理が重要なのか?
塗料の密着性が向上する
塗料は「きれいな面」「ざらついた面」に対してより強く密着します。汚れやツルツルした表面には定着しにくく、耐久性が著しく下がるため、下地処理によって適切な塗装面を作ることが重要です。
長寿命な仕上がりを実現する
正しく下地処理を行えば、塗料本来の性能(防水・耐候性・美観)を最大限に発揮することができます。これにより塗り替えの周期を延ばすことができ、コスト面でも大きなメリットがあります。
トラブルの予防
下地のクラックやサビを処理せず塗装した場合、短期間で剥離や膨れ、再劣化が起きやすくなります。これにより施工不良のクレームにつながるケースもあり、施工業者にとっても信頼性に関わる要素です。
手抜きされやすい?注意点とチェック項目
残念ながら、外からは分かりづらい下地処理の工程は手抜きされやすいポイントでもあります。以下の点を確認することで、信頼できる施工業者かどうかを判断できます。
- 高圧洗浄の日数や使用機器の説明があるか
- ケレン作業の説明やビフォーアフターの写真があるか
- 補修内容を工程表で説明してくれるか
- 養生後、実際にクラックや目地補修の跡が確認できるか
施工前に工程の詳細な説明がある業者、写真付きで進捗報告してくれる業者は信頼できます。
まとめ:良い塗装は「見えないところ」で決まる
「どの塗料を使うか」よりも、まずは「どのような下地処理がされるか」を重視することが、塗装工事の成功のカギを握っています。下地処理は目に見えづらく、工事完了後には隠れてしまう工程ですが、長持ちする塗装を実現するための「縁の下の力持ち」なのです。
これから塗装工事を検討している方は、ぜひ下地処理の内容に注目して業者を選ぶことをおすすめします。